家族の前でしか話をしない

お家ではよく話すお子さんが,園や学校では誰ともひとことも喋らない…といった悩みをご相談いただくことがあります。

家では普通に話せているぶん,家ではなかなか気付かれず,むしろ先生方のほうが先に気がついてくださることも多いです。担任の先生から「お子さんは,学校では全然お話をされないんですよ」と言われたら,きっと親御さんはびっくりされることと思います。

このような状態は選択性緘黙と呼ばれます。
ある状況だけ選んで黙っているように見えるからです。

ある場面でだけ黙っている,という意味で場面緘黙ということばもよく使われます,

たとえば,診察室で選択性緘黙のお子さんの意思を確かめたいとき,「ちょっと私は席を外すから,そのあいだにお母さんと相談して決めてくれるかな?」とお伝えして退席すると,ちゃんと診察室の中でお母さんと話し合えていたりする,そんな状態です。

喋る能力はきちんとあるにもかかわらず,特定の状況では話したい気持ちになれないというこの症状。

原因はまだはっきりとはわかっていないのですが,過去の失敗やいじめ・無視など対人関係上のつらい体験から話すことが怖くなっていたり話すことへの拒否感が生じていたりするのではないかといわれています。家族以外のひとに対する距離の取りかたや自己表現のしかたに難しさを抱えていると考えてもよいのかも知れません。

 

 

対応・治療法

学校などの社会集団のなかで話をしないでいることでお子さん本人が被る不利益のことを考えると,「喋れるんなら喋ればいいじゃない!」「人前で話さないで,どうするつもりなの?」と喋るよう急かしたり叱ったりしたくなるのは当然のことです。

でもお子さん本人だって,スムーズに喋れるところをわざと喋らずにいるわけではないでしょうし,何故話せないのか,どうすればいいのかと悩んでいることと思います。

まずは選択性緘黙という名前のつく状態だということをお母さんお父さんが受け容れてあげて,何かお子さんが苦痛に感じていることはないか(もちろんそれが原因とは限りませんが)を気に掛けてあげてください。園や学校の先生が話をするようお子さんに強く促しているようなら,お母さんお父さんからそれがわざとではなく選択性緘黙という症状として出現していることをぜひ伝えてみてください。

それから,園や学校で話せていてもいなくても,お子さんが興味を持って楽しめていること,熱心に打ち込めていることなどはぜひ引き続き楽しめるように配慮してあげてください。選択性緘黙という症状以外にも,お子さんには元気で健康な部分がたくさんあるはずなので,そちらへ注目するというのはとても大切なことだと思います。

お子さんが安心できたり,少し自信がもてたり,リラックスできてきたりすると,徐々に家族以外のひとに小声で返事をしたりするようになってくることがあるように感じます。たとえば,授業で当てられたときだけは答えられる,担任と1対1のときは返事ができる,みたいなイメージです。

選択性緘黙のお子さんが自分から「相談や診察に行きたい」ということはあまりないと思いますが,ときにはリラックスのために薬物療法が有効なこともあるので,精神科受診などに興味があるようなら「最初は喋れないかもしれないけど行ってみる?」と声を掛けていただけると嬉しいです。

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コメント: 3
  • #1

    mio/mio (金曜日, 24 2月 2012 14:13)

    はじめまして!こちらのサイトを初めて拝見させていただきました。私には長女、長男がいるのですが長女はこうはん性発達障害、長男は場面かんもくがあります。日々いろいろ情報収集して子育てをしていますが、まだまだ分からないことだらけです。特に場面かんもくは、どうして?の連続です。あいさつぐらいはと思うのですが、それが一番難しいようです。

  • #2

    mio/mio (金曜日, 24 2月 2012 14:17)

    (つづきです)子供の気持ちや考えがもっと理解できる親になりたいです!これからも拝見させていただき勉強させていただきたいです

  • #3

    child-mental-health (火曜日, 14 8月 2012 23:33)

    mio/mioさん,コメントありがとうございます。レスが大変(半年も!)遅くなってしまって本当に失礼致しました。
    申し訳ありません。

    おふたりのお子さんのこと,ご心配ですね。
    診断がついているということは,主治医の先生がいらっしゃったり,相談できる支援者がいらっしゃったりするのですよね。
    お子さんたちは,mio/mioさんの予想とは違う言動を取ったりして困惑されることもあるでしょうけど,やっぱりお子さんそれぞれの思いがあってのことだと思います。mio/mioさんがすぐにはすべてをわかってあげられなかったとしても,「お母さんは知りたいと思ってるよ」というメッセージが伝われば,お子さんは安心して過ごすことができると思います。ゆっくり時間を掛けてでも,少しずつお子さんの気持ちや考えがわかるようになったらいいですね。
    このブログの更新は今はストップしていますが,またいつでも書き込みにいらしてくださいね。今度こそすばやく反応させていただきます!