「素直で,憎めないひとばかりです」

先日,ある研修会でアルコール依存症の治療に専門的に取り組んでいらっしゃる先生のお話を伺いました。

講演の途中で,先生は穏やかな笑みを浮かべてこうおっしゃいました。

 

「アルコール依存症というと,精神科の専門医の先生たちも敬遠しがちだったりしますが,これがなかなかどうしてお酒が入らないときは本当にみんな素直で,憎めないひとばかりですよ。身体的な部分も含めてちゃんと適切な治療をしていけば,ちゃんと治る病気なんです」

 

これまでアルコール依存症という病気をそういうふうに捉えたことのなかった私には,とても印象的な言葉でした。

 

そして,私のあたまはちょっと前に出向いた別の研修会のことを思い出していました。

 

その研修会では,境界性パーソナリティ障害を積極的に面接していらっしゃる心理士さんの講演がありました。

 

「境界性パーソナリティというと,診療や面接が難しいというイメージをどうしても持たれやすいと思います。でも,彼ら/彼女らは感情のコントロールがうまくいっていないという面は持っていてもとっても素直だし,きちんと適切な支援が届けば意欲的にがんばれる,憎めないひとたちなんです」

 

・・・。

 

おふたりの先生,ご自分の専門としているそれぞれの患者さん・クライアントについてまったく同じことをおっしゃているではありませんか!

 

治療者が患者さんに対して勝手に苦手意識やマイナスイメージを持って対峙するのではなく,治療や支援の適切なやりかたがあるんだという自信をもって,そして自信がもてるだけの技術と経験をもって,治療や支援にあたることが本当に大切なんだな,と痛感するできごとでした。

 

私自身は,アルコール依存症や境界性パーソナリティの患者さんとはあまりお会いする機会はないけれど,少なくとも心の不調をきたしたこどもたちとそのご家族にお会いするときにはいつも「きっとこの子は元気になる!」というポジティブな気持ちをもてているかな…とちゃんと自問しつつ,診療の腕も磨いていきたいな,と思いました。

 

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コメント: 4
  • #1

    oichin (月曜日, 18 10月 2010 17:39)

    精神科特有の事情なんでしょうか。他の医療なら、対処療法としての投薬や手術などの処置が行われるけど、精神科の場合、投薬で状況の改善は有っても、治療にはならない様な気がするのです。東洋医学的な「治す」のイメージの方が合うのです。

  • #2

    child-mental-health (火曜日, 19 10月 2010 23:57)

    ありがとうございます。

    慢性的な身体疾患だって精神科的な疾患だって,ただお薬を飲むだけでは根本的な解決には至らないことが多いですよね。

    生活習慣を変えたり,症状と共存したり,症状に振り回されずやり過ごせるようになったり…そういう部分は患者さんご自身が取り組むしかないと私は思っています。もちろん,取り組んでいただきやすいようにお手伝いするのは治療者の役目のひとつですが。

  • #3

    キラコー (水曜日, 20 10月 2010 18:20)

    患者さんに苦手意識やマイナスイメージを持たずに接するって、なかなか難しいことですよね。
    僕たちの仕事もそうですが、基本的にマイナスな状態でいらっしゃるというか、プラスのコンディションで来られる方など珍しいですから。
    そういう意味では、自分が他人のマイナスの気を受けないくらいしっかりとコンディショニングできてないと難しいなと思ったりします。
    日々、自分の中に生まれてしまうマイナスのイメージを小さな紙に書いて燃やしたり、なるべくマイナスのイメージが自分の中に深く根付かないようにこころがけています。

  • #4

    child-mental-health (木曜日, 21 10月 2010 00:26)

    キラコーさん,コメントありがとうございます。

    自分のコンディションって,あまり協調されないけどとても重要だと私も思います。
    自分が患者さんにちゃんと気配りができるくらい余裕のある状態でいること,それと巻き込まれずにいられるくらいほどよく鈍感な状態でいること。

    そして,落ち着いて患者さんやご家族のプラスの面にきちんと注目できたらいいですよね☆ すべてが症状に押しつぶされているわけではなく,健康な部分やうまくいっている部分もたくさんもっていらっしゃるはずですから…。