発達障害を診断するということ

これまでの記事で,本来「発達障害」とはこころやさまざまな脳力の育ちのデコボコであったりバラツキであったり…といったことを書いてきました。

そして,そのすべてが精神医学的に「発達障害」という診断がつくわけではない,というお話もしました。

 

でも,発達障害の特性のために社会での適応が難しくなることはあるわけで…,

 

そんなときには,やっぱりきちんと発達障害の診断がつくほうがよいのかな,と思うことがあります。

 

「診断がつく」ということがとてもネガティブにとらえられることがあるように感じますが,そもそも「診断をつける」ということは,「支援が必要だ」ということそのものだと私は思うのです。

 

発達障害の診断がつくということは,こころや能力の育ちにデコボコやバラツキがあって,そのデコボコ具合,バラツキ具合が一定の程度以上の濃さでみられる(診断基準を満たすほどである)ということを意味しています。

 

支援する側が「診断がついた,あースッキリした! 以上。」なんてことがあっていいわけがない!!

それじゃあ何のために診断したのかさっぱりわかりません。

 

一定レベルの特性をもっていて,そのことで社会適応上の難しさを抱えているとわかったのなら,手助けする方法を具体的に考えるという作業は絶対にセットでくっついてくるべきだと思うのです。

 

今の医療システムでは,医学的に「発達障害」と診断できる立場にあるのは医師のみ。

 

支援するつもりもないのに,診断基準にあてはまるかどうかだけチェックして,診断名を伝えて,後はぷっつり…そんな診察はあってはならない,と私は思います。

 

極端なことを言えば,発達障害の診断だけを伝えるという作業は,胃が痛いと受診した患者さんに胃カメラをして「あー,胃に潰瘍(かいよう)ができてますね,だから痛むんですよ」とだけ伝えて治療をしない…それと似たような状態だと言えるかも知れません。

 

発達障害という特性そのものを医学的に「治療」できるわけではありませんが,診断がつくほどに発達障害に伴う困難さが生じているなら,そこに医学的な支援をするのはあたりまえの姿勢。

 

医学だけでは支援が不十分だと考えれば(医療にだけでは支援が足りないことも実際たくさんあります),多職種と連携して支援を組み立てていく。

 

それが,発達障害を診断する医師の使命だと思うのです。

 

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コメント: 4
  • #1

    ゆめ (火曜日, 05 4月 2011 10:38)

    小学生の子供が不登校になり、念のため大学病院で検査を受けました。診断がつき、発達障碍全般に関する見開き一枚のパンフレットを
    渡されて終わりでした。
    不安だらけの中とても悲しい気持ちでした。

    今回のこのHPを見て、こういった考え方をしてくれる精神科医の方もいてくれるのだと嬉しくなりコメントしました。
    同じようなお医者様が増えてくださるよう切に願います。

  • #2

    同上 (土曜日, 16 7月 2011 03:17)

    こちらの先生はとても良心的なお話で
    心が慰められます。

    たいていは
    水泳タイムは計れても
    溺れている泳げない子を援けては
    くれないのが現実。

    聴力はありますと言って相談しているのに
    聾学校を勧められたり

    国立大学付の相談センター心理士は
    高い相談料とって面談中に
    めいっぱい欠伸したり。

    涼しいところで何も考えずぼーっとしてたら
    そりゃ人間眠くもなりますよね。
    (いやいや時間の無駄です・・
    やめましょう)

    これまででは言語聴覚士の先生と
    中川信子先生の著作だけが救いでした。

    自分の精神衛生のために
    ○まずとにかく他人には期待しない
    ○たまのよき出会いには心から感謝
    のスタンスでいるようにしています。
    (それでも時々ガックリするけど)

  • #3

    child-mental-health (火曜日, 26 7月 2011 22:04)

    ゆめさん,コメントありがとうございます。
    お子さんに診断がついた後,診断の持つ意味や今後の見通しなどがわからないと,本当に不安になりますよね。
    医療機関によっては診療時間に対して患者さんの数が多すぎて,どうしても診断することで手一杯,という状況になってしまっているところもあるようです。診断してくださった医師以外にも,身近なところに相談に乗ってくれる支援者や一緒にお子さんへの関わり方について学べる仲間を見つけて,たくさんのひとの力を借りながらお子さんをすくすく育ててあげていただけたら嬉しいなと思います。またいつでもお声を掛けてくださいね!

  • #4

    child-mental-health (火曜日, 26 7月 2011)

    同上さん,コメントありがとうございます。
    私も,中川信子先生の著作,大好きです!
    やはり支援者との相性があったり,支援者ひとりひとりの得意分野があったりして,相談や診療に通っても十分納得できることはなかなかないかもしれません。私自身も診察室で「この患者さんのリクエストには十分お応えできていないな…」と感じることがあったりします。
    私たち支援者が自分にできる役割をめいっぱい果たすべきなのは当然のことですが,利用してくださるみなさんにはいろいろな支援の場や相談相手を見つけながら上手に必要なサポートを受けていただけたらありがたいなと思っています。