発達障害診断と心理検査。

発達障害の診断について,まずは「生育歴をお聴きする」ことが重要,と先日書きました。

今日は,心理検査のお話です。

心理検査とひとくちに言っても,お子さんの年齢によって,それから診断する医療機関の特性によって,行われていることはずいぶん違うのではないかと思います。

そして,検査によっては「この検査はこういうところをアセスメントするためにやってるんですよ」ということを意識しないで,自然な感じで取り組んでいただくほうがよいタイプのものがあったりします…。

なので,ここではウェクスラー式知能検査のことだけ触れておこうと思います。

ウェクスラーさんという方が開発した検査で,いわゆる「知能検査」としていちばん知られている検査法だと思います。お子さんの年齢によって3つの違う検査セット(WPPSI,WISC,WAIS)が用意されています。

3種類のセットはそれぞれ10個程度の別々の課題の組み合わせで構成されていて,それぞれの課題の結果から,検査を受けたお子さんがどういう種類の情報をどんなふうに処理しているかといったことが垣間見られるようになっています。

ものすごく大まかに言うと,耳で聞いたことばに対して主に口頭で答える課題(言語性課題)と目で見たものに対して主に手を動かして答える課題(動作性課題)に分かれています。

たくさんの課題に挑戦した結果,それぞれどれくらい正しく答えられたか,どれくらい早く答えられたかなどの点から評価して,全体的なIQと言語性・動作性IQなどを算出することになります。

さて。

ここまで読んでいただいてピンと来る方もいらっしゃったかもしれませんが…,このウェクスラー式知能検査は「発達障害かどうか」を診断するための検査というわけではないのです。

お子さんがどういうものの見方やどういうタイプの情報処理が得意なのか,逆にどういうやりかただと苦手になってしまうのか,といったことを大まかに知ることができる検査なのです。

一般に自閉症スペクトラム特性をもつひとは,聴覚からの刺激よりも視覚からの刺激のほうが情報がきちんと伝わる,といったことが知られていますが,必ずしもすべての自閉症スペクトラム特性をもつひとにその傾向が見られるわけではありません。言語性情報処理も動作性情報処理も同じくらい得意なひともいれば,むしろ言語性情報処理のほうがずっと得意なひとだっているのです。

だから,たとえば「WISC検査“だけ”をして発達障害と診断された」というのは厳密にはおかしい,ということになります…。

診断確定に必ずしも必要ではない検査なので,私の外来ではすべての患者さんにウェクスラー式知能検査を受けていただくことはしていません。

でも,検査を受けたひとがどんな情報処理が得意でどんな情報処理は苦手なのかをある程度知ることができる検査であるのは確かです。

「診断するためというわけではないんだけど,あなたの得意なやりかたを今後活かすために,そして苦手さを補うヒントを得ておくと将来役に立つんじゃないかなと思います。そのために検査を受けてみる気はありますか?」といった感じでオススメしています。

検査は種類によっても違いますが1時間~2時間くらいかかることが多くて,結構大変です。

受けるひとのコンディションによって結果が変わってしまうものなので,とっても落ち込んでいるとき,すごく眠気の強いとき,意欲がわかないときに行ってもそのお子さんの本来の力はわかりません。

せっかくなら一生懸命取り組んでもらってそのときのベストな状態を見せていただきたいし,お子さん自身にも知ってもらいたいので,「自分のためにがんばって検査を受けてみよう!」と思って受けてもらえるのがいちばんいいかな,と私は考えています。

診断も検査も,お子さん自身のために。よりよい支援のために。
そこは大切にしたいなぁ,と常に思っています。

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コメント: 2
  • #1

    五藤博義 (火曜日, 21 12月 2010 09:14)

    twitterで興味深い情報をありがとうございます。当社のこども脳機能バランサーは、手軽に認知機能の様子が分かる、ということで、某独立法人の医療センター等で、幼児の認知検査にWisc3と併用して使うことが始まりました。Wisc3との相関が出れば、より手軽に使える認知検査になると期待しています。また、問題は毎回異なりますので、学習効果が出にくく、認知トレーニングとしても使えるのではと考えました。勝手な情報をお知らせして、お騒がせしました。

  • #2

    child-mental-health (土曜日, 25 12月 2010 16:45)

    > 五藤博義さん

    コメントありがとうございます。レス遅くなってごめんなさい。
    こども脳機能バランサー,googleで検索して拝見致しました。こどもが興味を持って取り組めそうな課題がいろいろありますね!かわいらしいしとても楽しそうです。学習効果が出にくいものいいですね。うちの病院に正式に導入というのは難しそうですが(いろいろ縛りがあるのです…),個人的にこっそり使ってみるのはいいかも…また詳しく資料読んでみます。情報ありがとうございます。