発達障害告知シミュレーション

つい先日のこと,地元で児童青年期のこどもたちのこころの診療や面接を行っているなかまたちと研修会を開いたのですが,そのなかでのできごとです。

「発達障害の診断を,どうすれば親御さんにうまくお伝えできるだろう?」と,参加者のひとりが発達障害の告知場面をロールプレイで練習してみようという企画を提案してくれたのです。

 

診断より大事なのは支援,なのはもちろんですが,どうしても診断名を伝える必要が出てくる場面もあるわけで…そのときにやはり「伝えればそれでいい」なんてことがあってはいけませんよね。

 

互いに告知する医師役やお子さん本人役,親御さん役など立場を変えながら,いくつかのケースをシミュレーションして,その都度ベテランの児童精神科の先生のスーパービジョンもいただいて全員が学びを深める,とても貴重な機会となりました。

 

今回集まったメンバーは,みんな普段の診療・面接のなかで発達障害特性をもつこどもたちとたくさん接している医療者ばっかり。

 

そのなかで特に医師たちは,それぞれ自分自身が診療の場で診断名を伝えるという過程を何度も経験しています。

 

でも,お互いに

「ほかの先生はどんなふうに伝えているんだろう…?」

「もっと上手に伝える方法はないのかな…?」

と疑問をもちながら,手探りで診断告知を行っているというのが現実だったりします。

 

これまでに蓄積した経験や新しい知識を活かしながら,でも日々ひとりひとり違うこどもたちやそのご家族に出会いながら,試行錯誤しているのです。

 

お子さんがひとりひとり違うんですから,どんなに経験を積んだとしても「この前の告知と同じでいこう」というわけにはいかないんですよね。

 

そして,もちろんお子さんやご家族にとっては,初めて診断名を知らされる場面は,まさにたった一度の体験。

 

初めて診断を知らされる体験は,やっぱりとても衝撃的なできごとだと思うのです。

 

少しでも「こどものことがわかってよかった」と感じていただけるように。

少なくとも,診断を伝えることが家族やお子さんの心を不用意に傷つけることのないように。

 

必要な情報をきちんとお伝えして,疑問や納得しづらい点には丁寧にお答えして,ご家族の揺れるお気持ちをきちんと受け止めて寄り添わせていただいて…。

 

私自身ももっともっと上手になりたいなぁ,と改めて感じる機会となりました。

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コメント: 4
  • #1

    oichin (月曜日, 15 11月 2010 17:09)

    医師って、そういう意味では、特にそういった活動をしないと、「孤独なプロ」なんですね。一方、私の業界では、内に篭るというか、言われたことをそれで良いと思って、根拠も無いのにそのまま過ごす人とか結構居るので、技術論としての交流の場が増えると良いな、と思っています。ただし、ちゃんとコーチできる人が少ないかもという悩みが有りますが。

  • #2

    child-mental-health (月曜日, 15 11月 2010 17:27)

    > oichinさん
    考えてみれば,大学病院のようによほど医師がたくさんいて日常的に指導を受けられるような病院でない限り,医師は結構孤独ですね。今中堅くらいになっている多くの精神科医は,大学病院や研修医時代に勉強させていただいた病院では発達障害について学べていない(それだけ発達障害が新しく広がった概念ということですが)ので,余計に不安だったり自信がなかったりします。
    技術者さんも医師もですが,プロと呼ばれる仕事は一生知識のアップデートや学びの継続が欠かせませんよね。私もひきこもり医師にならないよう気をつけなくては…!

  • #3

    take3siz (木曜日, 18 11月 2010 01:41)

    初めまして。親だけではなく親の親、子供の祖父母にも説明する制度があると良いのにな、、と良く思います。発達障害の子供を育てる親(特に母親)は本当に孤独で、世間のみならず、親からも突き放されてしまいます。

  • #4

    child-mental-health (金曜日, 19 11月 2010 23:37)

    >take3sizさん
    コメントありがとうございます。
    おっしゃるとおりで,おじいちゃん・おばあちゃんにわかっていただけているかどうかは本当に大きな違いだと私も感じます。「えっ,発達障害?」と疑問を感じられても,診察室へ来てくださるようなら少しずつこちらからもお話しできたりするのですが,病院にもなかなか足が向かない,という場合も結構ありますもんね…。