精神科の能動的利用

昨日は診療を続けることへの疑問を打ち明けてくれた患者さんの話を書きましたが,関連してふと思い出したことがありました。

もうだいぶん前のこと,今の病院に来てくれた患者さんのエピソードです。

 

(もちろん昨日のケースもそうですが,個人が特定されないようフィクションを交えながら書かせていただいています。)

 

ひきこもり傾向があって,自分が楽しいと思えるところには出掛けられても大学に通えなくなっている,という状況でした。

 

2回目の受診のとき,こんなふうに言ってくれました。

 

「前回ここで自分の考えていることを話したら,すごく思考がまとまって楽になって。もしよかったら次からまた僕の診療時間を60分とってもらえませんか? そのかわり,受診間隔は長めでもいいですから…」

 

ちなみにうちの病院,初診は60分,再診は30分という予約枠で動いているのです。

 

たしかにこの患者さんは自分のおかれた状況や悩みについてとてもよく考えていて,自己洞察をしっかりして話をしてくれる印象でした。診療時間を長くとるのも決して無駄じゃないなぁ…と思って「ずっとそうするわけにはいかないだろうけど,特に初めのうちは話したいこともたくさんあるでしょうから…」とO.K.したのです。

 

それからしばらく,60分をいっぱいに使って,前回から受診日までにあったできごとや,これから自分がどうしようと考えているかといった話をしっかり聴かせてもらう診療が続きました。

 

やがて「今月の初めから毎日大学へ通うようになりました。今までの自分は何だったんだろう? と思うくらい大学生活が楽しいです」と教えてくれました。

 

その2ヵ月後だったか,また彼から提案してくれました。

 

「今までは60分喋りたいように喋らせてもらってきました。でも,もう僕は1回30分で大丈夫だと思います。今までありがとうございました。まだ診察を卒業する自信まではないので,もうしばらく見守っていてください」

 

「もちろんです! こちらこそお気遣いありがとう」ってお答えして,受診間隔を狭めることもなく30分枠へ移行してもらいました。

 

まだ若いのに,こんなにもいろいろなことを考えながら能動的に受診してくださるかたは珍しいなぁ…と,とても記憶に残った患者さんです。

 

それから間もなく診察室を卒業していきました。…

 

 

もちろん,すべての患者さんがご自分が思ったとおりの医療を受けられるわけではないと思います。

 

でもできることなら,受診することをチャンスと思って,主治医に積極的にリクエストしながらご希望に添うように使っていただきたいのです。

 

そして,もしも患者さんのご希望が叶わなかったとしても,そんなふうに主体的な姿勢で診療の場に来てくださっていることは患者さんの回復にとってすごくプラスになるはず…ご希望に添えなくてもそこはしっかりお伝えして患者さんと共有したいな,とも思っています。

 

ブログトップ