2010年

12月

01日

ちっともよくならない…

今日は私の反省すべきできごとについて書いてみようと思います。

診察室にお母さんと一緒に来てくれている高校生の女の子の主治医だったときのこと。

 

お母さんはとってもお子さんのことを心配してくださっていて,でもお子さんはほとんど診察室では喋らなくて。

 

必然的に,お母さんがお子さんの思いを想像して代弁して話してくださるようなかたちになっていました。

 

お子さんの主訴は「元気になりたい」ということなのですが,あまり詳しいことが聴けないまま経過しているなかで,ある日お母さんがこんなふうにおっしゃいました。

 

「ずっと受診を勧めていたので通うようになっただけでもよかったと私としては思ってるんだけど,この子は『病院へ行ってもちっともよくならないから,今日行っても治らないならもう行かない』って言いながら来たんです…」

 

 

…わぁ,ごめんなさい!

 

きっと彼女は「病院に通えば自分の状態はよくなる」と思って通ってくれていたんです。

 

そりゃ,お母さんのおっしゃるとおり,病院に通わないよりも通えるようになったことはとっても大きな進歩。

 

でも,通いさえすればよくなる,というわけではないんですよね。そこがちゃんと診療スタートの時点で彼女に説明できていなかったんです。当然わかってくれていると思って省略しちゃっていたんですね…。

 

「ごめんね,大事なことをちゃんと伝えてなかったみたい。今さらこんなこと言ったらガッカリするかもしれないけど…ここへ通ってくるだけで元気になれたり問題が解決するわけじゃないんだよ。今の困りごとをお話しして解決策を考えたり,今までと違うことを少しずつ実行したりしながら,ちょっとずつ調子を上げていくっていう感じになると思うんだ」

 

それを聞いて,彼女はちょっと考え込んでいました。

 

結局この日の診察でも,特別な解決策が浮かんだり劇的な行動プランができあがったりしたわけではなかったけれど,どうにかその後も通院を続けてくれました。

 

 

こどもの精神科のことを広く知ってほしい,上手に活用してほしいと思っている私。

それはこのブログを始めるきっかけにもなったくらいの思いです。

 

なのに,目の前の患者さんに上手な受診方法をちゃんと伝えずにいたことをとても悔やんで深く反省したできごとでした。

 

こども向きでもおとな向きでも,やっぱり精神科ってなんだかちょっと神秘的で魔術的なイメージをもたれやすいところがあるように思います。ちょっと大袈裟に言えば「そこへ行きさえすれば奇跡的に問題が解決する」みたいな…。

 

それって,精神科がどんなことをするところか,という情報があまりなくて,現実的なイメージをもっていただきにくいためだろうと思うのです。

 

だからこそ,私たちがきちんと「ここでこれから何をしていくか」を初診のときなどにきちんと情報提供しなくてはいけませんよね。

 

同じ失敗を繰り返さないように,この記事に書き留めておこうと思います。

 

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