2010年

12月

04日

ADHD(2) 薬物療法について

今回はADHD特性への対応について書いてみようと思います。

まずは,お薬による治療について。

ADHDはいろいろな発達障害のなかで,薬物療法の効果が最も期待できます。

 

これは前回も書いたとおり,ADHDの特性がみられる主な理由が自分の行動をコントロールする脳部位(前頭前野)のはたらきがうまくいっていないからだ,とわかっているからです。

 

お薬についてはいろいろありましたが,今はコンサータというお薬とストラテラというお薬がADHD治療薬として使われています。

 

このふたつのお薬のはたらきかたはそれぞれちょっと違うのですが,どちらも結果的に前頭前野での神経と神経の連絡(神経伝達物質の伝わり)がスムーズになるような作用をもっています。

 

ただし,現時点ではどちらのお薬も6歳以上18歳未満のお子さんにしかお出しすることができません。

(2010/12/05追記:ストラテラは18歳未満から使用している場合には18歳以降にも継続して使用することが認められました。ご指摘ありがとうございます!)

(2013/07/03追記:コンサータも2011年8月26日より18歳以降の継続使用が認められました。そしてストラテラについては2012年8月24日より成人への処方も認められています。)

 

さらにコンサータについては,処方できる医師が一部の精神科医・小児科医に限られているので,どの病院に行っても必ず処方してもらえるとは限らないのが難点です。

 

お薬の効果が期待できるADHDではありますが,残念ながらお薬を飲むことでADHDが完治するというというわけではありません。

 

お薬を飲めば,たしかに多くのお子さん(有効性は8割くらいといわれます)にとって自己コントロールはしやすくなりますが,風邪薬などと一緒であくまで対症療法です。風邪薬が咳や鼻水を抑えてくれてもお薬の効き目が切れればまた症状が出るのと同じで,ADHDの治療薬も効いている間だけ症状を抑えてくれる,ということになります。

 

それでも,ADHDのお薬を飲んで自分をうまくコントロールしやすくなることにはふたつの面でとても意味があると私は思います。

 

ひとつは成功体験を積んでもらいやすくなること。

これまで,一生懸命やっているのになぜか思うようにいかなくて挫折体験を重ねてきたお子さんが,ほんのちょっとお薬の力を借りるだけで自分にもこんなにうまくやれるんだ,って感じられることは自己肯定感を回復する大事なきっかけになると思うのです。

別にこれまで自分の努力が足りなくて失敗してたわけじゃないんだ,本来の力さえ発揮できればこんなにちゃんとできるんだ,と感じられれば,自分のことを信じていろんなチャレンジをしてみたいという気持ちを取り戻しやすくなるはずです。

 

そしてもうひとつは,まわりの人との関係を改善しやすくなること。

お薬を飲んでコントロールが効きやすくなることで,先生やまわりのおとなから怒られる機会も減るし,友達とのケンカも抑えられることが多いので,お子さん自身も悔しい気持ちや恨みの気持ちを減らすことができるし,まわりからもだんだん肯定的に見てもらえるようになって,何でもかんでも「またアイツが…」とマイナスの先入観をもって評価されるようなことも少なくなってきます。

まわりからの評価がよくなるということも,お子さんの自信回復につながる大切な要素です。

 

もちろん,たとえ発達障害特性をもっているとしても脳のはたらきはだんだん育ってきます。

薬物療法によって自己肯定感を取り戻しながら,そしてまわりの人との感情的なこじれを防ぎながら脳の育ちを待つことができたら…,

 

いずれお薬を飲まなくなったときにも脳本来のコントロール力をうまく活かせるようなこころの状態を保てている可能性がグッと高くなるはずです。

 

どんなお薬にも,出てほしい効果と出てほしくない効果(副作用)があるものなので,いくらお薬が多くの人に有効であってもやはり体質に合う・合わないという問題は出てきます。

そのあたりは主治医の先生とよく相談しながら,お子さんに合ったお薬を必要な量,必要な期間だけ使っていくのがいいのかな,と思います。

 

…お薬のお話だけで長くなってしまったので,また続きます。

 

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