2010年

12月

13日

こどもが私を避けるんです…?

思春期くらいのお子さんがお母さんやお父さんを避けることは,決して珍しいことではないと思います。

ときどき不機嫌そうに避けたり,なんとなく親御さんの目の届かないところでこそこそ行動したり(友達に連絡を取るとか…)というのは,思春期のお子さんをもつご家庭ならよくある話。

 

今日の記事は,ちょっとそれとは違うケースです。

 

もう少しオーバーと言えばいいのか…,

 

たとえば同じ駅を使って同じ目的地に向かうときにも,家から駅までバラバラに行ったり,わざと離れた席に座ったり。

 

外出するときに,何もやましいことがあるわけではないのに絶対行き先を知らせなかったり。でも,ちゃんと常識的な時間に帰宅して家族と食事したり。

 

親元で暮らしていながら,生活も親御さんに守られていながら,「お母さんは話し掛けないでほしい」みたいなことを言ってみたり。

 

実際ひとことも親御さんと話をせず,さらには視線も合わさないように過ごしているお子さんもいらっしゃいました。

 

親御さんからお話をお聴きしていると,ため息をつきながら「私,こどもに嫌われてるんです。とっても心配な状態なのに,あんなに避けられて関わることも全然できていなくて…」とおっしゃられるような状況…。

 

親御さんにしてみたら,お子さんのために何か手を差し伸べたい,でもそれを極端なほどに拒否される…お子さんに関わるきっかけがなかなか得られなくて,とてもおつらいだろうと思います。

 

ところで,こんなふうにお母さんを極端に避けるお子さんに,診察室で思い切って尋ねてみたことがあります。

 

「変なこと聞いて悪いんだけど,…お母さんのこと嫌いなのかな?」

 

すると,患者さんはビックリした顔でこちらを見て言いました。

 

「違います! 嫌いなわけじゃありません。ただ…お母さんに自分の考えを話してしまうと,それは親を頼ったことになってしまうから…」

 

そうなんです。

こんなにもこの患者さんがお母さんのことを避けていた理由は,自分が自立するために考え出した儀式的な行動だったのです。

 

まったく同じ理由で,お母さんのことがとても好きなのに「母さんにはこの家から出ていってほしい」と毎日言っている患者さんにもお会いしたことがありました。

 

「話し掛けるな」「出ていって」…そんなお子さんのことばをストレートに受け取ると,親御さんはとっても悲し気持ちになるでしょうし,「こんなにあなたを心配しているのに…」と腹の立つこともあるでしょう。とても穏やかな気持ちではいられませんよね。

 

でも,自立に向けて,本当は全然嫌いでもない,むしろずっと頼りにしていたい親御さんとがんばって距離を取ろうとしている…でも器用に少しずつ間を開けることができなくて,自分を奮い立たせて無理やり離れようともがいている…そんなお子さんの気持ちに思い当たれば,お子さんの成長を感じたり,自立しようとする思いを応援しようと感じられたりするかもしれません。

 

思春期を迎えて,お子さんがお母さんお父さんと少し距離を置こうとしてくるのは,ごくごくあたりまえの発達段階…むしろ安心してもよい徴候だと思います。

 

もしもお子さんにあまりにも極端に避けられ始めたとしても,どうかガッカリするのもムカッとするのも少し先延ばしにして,「なんで急にそんなことを…?」ってちょっと思いを馳せていただけたら嬉しいなぁ,と思います。

 

こんなときどうする?

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コメント: 2
  • #1

    ya_tom (金曜日, 17 12月 2010 08:48)

    いつも本当に参考になる、心に染み入るおはなしをありがとうございます。
    ここに書いておられる程度の「避ける」は思春期としては普通なのかと思っておりました。

    我が家の場合は一番体調が悪いころに「お母さん、早く死んで欲しい」と言われたことがあります。「そうね~、もういつ死んでも、あなたは自分で何とかあなたの人生をやっていくと思うから、そうさせてもらうわよ~~」と笑いながら答えつつ内心は結構ショックだったのですが、今日の記事を読ませていただいて、状況を理解いたしました。

    ちなみにその発言を聞いて上の子があとからこっそりと「家中で一番母ちゃんを必要としてるくせに、よく言うよ~」と笑いながら言っておりましたが、そう本人の目の前で言わなかったことは正解だったかもしれないな、と今思い返しております。

    これからも毎日楽しみによませていただきます。

  • #2

    child-mental-health (日曜日, 19 12月 2010 09:47)

    > ya_tomさん

    コメントありがとうございます。
    ドキドキのエピソードを教えてくださってありがとうございました♪
    「お母さん,早く死んでほしい」なんて言われたら…平静を装うのも難しいほどショックを受けますよね~。
    そうでも言わないとお母さんを頼り続けてしまいそうなお子さんの精いっぱいの自立宣言,そしてそれをわかっていてちゃんとフォローを入れてくれるお兄ちゃん(お姉ちゃんかな?)…ya_tomさんの育児はバッチリうまくいったんだなぁ,って感じます。
    また遊びにいらしてくださいね☆