2010年

12月

15日

ASD(1) 自閉症スペクトラムの考えかた

自閉症スペクトラムについては,なかなか簡潔には書けそうにありませんが…少しずつ記事にしていこうと思います。

まずは,その考え方について。

 

自閉症スペクトラムということばは,比較的最近になって普及してきました。

 

もともと世界で広く使われている国際的診断基準(DSMとかICDとか)には登場しない用語なのです(このふたつの診断基準は現在改訂中なので,次の版からは自閉症スペクトラムという呼称が採用されるかもしれません)。

 

自閉症スペクトラムに含まれる状態像は,従来の呼び方でいえば,自閉性障害とか高機能自閉症,アスペルガー症候群といったものが含まれます。このほかにも,広汎性発達障害とかPDDなんてことばを聞いたことがあるかたもいらっしゃるかもしれません。

 

自閉性障害(いわゆる自閉症)は,精神遅滞を伴うものです。

 

高機能自閉症とは,自閉症特性がありながら精神遅滞は伴わないものです。

 

アスペルガー症候群とは,精神遅滞を伴わない自閉症(つまり高機能自閉症)のうち,言葉によるコミュニケーションの障害が軽微なものを指します。

 

自閉性障害と高機能自閉症は,知能検査をすればIQの数値で便宜上分けることが可能です。便宜上,というかそれが唯一の区別ということになります。でも,極端に言えばIQ 69なら自閉性障害,IQ 70なら高機能自閉症と呼ばれる,ということですから,実際には両者の境目は結構曖昧といえるかもしれません。

 

高機能自閉症とアスペルガー症候群については,もっと区別が曖昧です。

「言葉によるコミュニケーションの障害が軽微」かどうかを判定する客観的な指標はじつはどこにも示されていないからです。幼少期の言語発達に遅れがあったかどうか,診察場面で流暢に話せているかどうか,といったことを頼りにそれぞれの医師の判断で線引きしているというのが現実かもしれません。

 

広汎性発達障害(PDD = Pervasive Developmental Disorder)には,自閉性障害・高機能自閉症・アスペルガー症候群のほかのもの(小児崩壊性障害やレット症候群)も含まれています(もしかしたら次の版の国際的診断基準からこれらは除かれることになるかもしれません)。

 

似たような状態を表すことばがたくさんあって混乱しますが,細かい差異は置いておくとして,共通する対人関係やコミュニケーションの難しさがあって支援が必要なひとたちがいるよね,というのが自閉症スペクトラムの考え方です。

 

 

自閉症スペクトラムには,3つの共通する特徴があります。

  1. 社会性(人との関わりかた)の障害
  2. コミュニケーションの質的障害
  3. 社会的イマジネーションの障害

知的な遅れがあってもなくても,ことばが流暢に使えても使えなくても,この3つの特徴をもっている人のことを「自閉症スペクトラム特性をもつ」と判断する,ということです。

 

自閉症スペクトラム特性の濃さはひとりひとり違うかもしれないけど,白か黒か,あっちかこっちか,とはっきり線引きできるものではなくて,光のスペクトラムのようにグラデーションになっていて,そのどこかに位置する,ということで「スペクトラム」といわれるのです。

 

そして,この3つの特徴はよく「3つ組(Triad)」と呼ばれます。

 

さて,前置きが長くなりましたが,次回からは3つ組の特徴をひとつひとつ紹介していきたいと思います。

 

発達障害について・各論

コメントをお書きください

コメント: 4
  • #1

    BUNTEN (水曜日, 15 12月 2010 18:14)

    校正です。
    訂正が終わるか、無視する場合に削除していただければ幸いです。

    >(この二津野診断基準は現在改訂中なので,
    →(この二つの診断基準は現在改訂中なので,

  • #2

    child-mental-health (水曜日, 15 12月 2010 22:37)

    > BUNTENさん

    ご指摘ありがとうございます。おかしな誤字ですみません。
    訂正させていただきました。
    コメント削除を…とせっかく言ってくださいましたが,ありがたいのでそのまま残させていただきますね!

  • #3

    かゆ (水曜日, 15 12月 2010 22:58)

    子どもが1歳半健診で発達の遅れを指摘され、3歳健診で自閉傾向といわれた頃のことを思い出しました。「自閉傾向?」なんだろう?すぐにネットで調べ、愕然としたことを覚えています。そこに並べられた症状が、あてはまることばかり。そしてそれは紛れもない「障害」というもの。原因にあてはまることはなく、原因不明。毎日泣いて、それでも調べて調べて、不安な日々でした。いまこうして、自閉スペクトラムという文字を見ても、中身をじっくり読んでも、「うんうん」とうなずいている自分がいます。
    それは、きっとこういう子どもを持ったことで得られたものが大きいこと、それが今私が前を向いていられることだと思います。
    こういう文章を、「うんうん」とうなずいて読んでいるお母さん、お父さんはすごい!のです。ワタシも!

  • #4

    child-mental-health (土曜日, 18 12月 2010 23:37)

    > かゆさん

    レス遅くなってごめんなさい!
    かゆさんのとても個人的で大切なお話を教えていただいてありがとうございます。

    …本当におっしゃるとおり,この記事を読んでいただきながら「うんうん」とうなずいてくださっているお母さんお父さんはとってもすごい!と私も思います。もちろん,かゆさんも♪