知り得ないことを知る…

私たちが仕事をしていて,まず知ることができないこと。

それは…,

診察室を卒業した“元”患者さんが,その後どうしていらっしゃるかということ。

 

どんなに元気になっていらっしゃっても「何かあったらまたいらしてくださいね」とお見送りすることにしているので,また苦しいことがあったときに来てくださるということはあるのですが…,

 

それっきりになってしまっている患者さんが,元気で過ごしていらっしゃるのか,それともつらい状態なのに再会できていないのか(もちろん私に愛想を尽かして転医されている可能性もあるわけです…),まず知ることはできません。

 

 

ところが。

先日偶然にも,もう何年も前にお会いした患者さんのその後を知ることができました。

 

なんと,ローカルテレビで。

 

まだ10代のときにある難病に冒されてしまったその患者さん。

その病気を治療する主治医から紹介されて私の外来に来てくれました。

 

それも,たったひとりで。

 

若くして難病を患ってしまっただけでも本当に大変なことだと思うのですが,彼の場合それだけでは済みませんでした。

 

ある道のプロを目指して修行中だったのに,どうしてもそれを諦めざるを得なくなくなってしまったのです。

 

そんななかでも,何とか今できる工夫を考えたり,気持ちを切り替えようとしていることをときに涙を流しながら話してくれました。当時私には何をすることもできなくて悔しかったけれど,せめて一緒に彼の無念さを分かち合えたらいいな…と思ってお話を伺っていたことを思い出します。

 

 

その彼が,テレビに出てきたのです! 私の目は釘付けに…。

 

結婚して,お子さんもいらっしゃいました。

 

そして,プロになることを断念したその道でアマチュアの仲間と集って,リーダー的役割も果たしていたのです。

 

 

あぁ,こんなにいきいきと過ごしていらっしゃったんだ…。

 

彼本人の知らないところで,勝手にウルッときてしまいました。

 

 

ひとりの精神科医として私にできることなんて,本当にちっぽけなこと。

 

でも,診察室でお会いする患者さんの力強さやしなやかさに,いつもこうして助けられているんだな…。

 

謙虚に,真摯に,診察室でお会いするひとりひとりの方と向き合わせていただこう,と改めて感じたひとときでした。

 

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コメント: 2
  • #1

    @longlong1028 (木曜日, 16 12月 2010 17:26)

    NINA先生、人間性が滲み出た内容に、恥ずかしながら“うるっ”告白。
    でも、彼自身の成長?した姿、いきいきした姿・・嬉しいですよね。
    いくつかの壁を壊し?よじ登り、乗り越え?遠回りして?どのような手段かは「?」ですが・・テレビの前に登場された姿。
    お逢いしたことはありませんが、想像しています。
    いつまでも、NINA先生が暖かなスマイルを添えて、診療に当たられておられるから・・
    感動的な・・・ありがとうございます。

  • #2

    child-mental-health (土曜日, 18 12月 2010 01:34)

    > @longlong1028さん

    コメントありがとうございます。
    本当にたまたまテレビをつけたらパッと目に飛び込んできて…すぐに「あ,あのときの!」ってわかったんです。
    お役に立てなかったという残念な思いが甦りつつ,今こうして元気に過ごしていらっしゃるという嬉しい気持ちが交錯して…不思議な感覚でした。