ASD(3) コミュニケーションの質的障害:話し言葉について

今回は3つ組のふたつめ,コミュニケーションの質的障害について。

コミュニケーションの難しさは,次の4つに分類するとわかりやすいかもしれません。

  1. 話し言葉の発信
  2. 話し言葉の受信
  3. 話し言葉以外の発信
  4. 話し言葉以外の受信

順に説明していきたいと思います。

 

まずは,1. と 2. について書いてみます。

 

1. 話し言葉の発信

  • 数字や単語の使いかたにとても厳密:あることが何月何日のできごとだったかを正しく言いたかったり,ある物事をどうしても正確で具体的な言い回しで説明したかったりするところがあります。明らかな誤りやアバウトな表現が許せなかったり…。正しく言い表したいという思いはとてもよいことだと思いますが,それが重要でない場合や時間の都合で割愛したほうがよいときなどにはちょっと困ってしまいますね。
  • 自分と相手の立場によって,ことばを使い分けることが困難:「自分があげる/相手がもらう」「自分が行く/相手が来る」「こっち/そっち」など,話す人の立場によってひとつのことを違うことばで表さなくてはならない場面があります。その使い分けが難しいことがあります。
  • 相互性を意識した言葉の発信が苦手:話し言葉の受信の問題ともつながってきますが,相手の言葉を踏まえてそれに応じた言葉を返すのが苦手で,相互にやりとりするのが困難になりがちです。話し言葉の受信だけでなく,心の理論の問題でもあるとされています(心の理論については,また改めてどこかで触れたいと思います)。

 

2. 話し言葉の受信

  • 自分が話せるほどには相手の話を理解できていないことも:ボキャブラリーも豊富で文法的にも正しく自分の言いたいことをきちんと正しく表現できていても,案外相手の話は上手に聞き取れていないことがあります。
  • 文脈での補いが乏しい:それまでの経緯や相手の言動を頼りに,受け取った言葉の本当の意味を読み取ることが難しかったりします。たとえばベランダでお母さんに「お鍋の火,見てきて!」と言われたら,お母さんの言葉の本当の意味は「お鍋の中身が十分煮えてたり焦げそうだったりしたら火を止めてきて」ということだと思われますが,「鍋の火を見てくる(見るだけで,鍋の中身の様子にかかわらず特に何もしない)」という言葉どおりの指示だと受け取ってしまいがちです。
  • 言葉を字義(文字の意味)どおりに受け取りやすい:比喩や皮肉で言われたことが通じにくかったり,社交辞令を真に受けてしまったり,親しみを込めてからかわれた言葉に心底腹を立ててしまったり,といったことが起こります。

言葉によるコミュニケーションの特性に関しても,思い掛けない行き違いが生じてしまったり,お互いに思ったように伝えられなくてもどかしい思いをしたりといったことが起こりやすいと言えます。

 

こういった特徴があるということを知っておけば,実際にやりとりするときには言葉の意味を読み取りやすくするヒントとなるような情報を少し多めに提供したり,うまく伝わったかどうかを念のためその場で確かめたり,回りくどい表現をせずシンプルに伝えたりするなどの工夫を上手に取り入れることができそうですね。

 

発達障害について・各論