2010年

12月

22日

ASD(4) コミュニケーションの質的障害:話し言葉以外について

3つ組のふたつめ,コミュニケーションの質的障害の続きです。

 

話し言葉の発信・受信については前回書いたので,今日は話し言葉以外によるコミュニケーションについて書いてみます。

 

話し言葉以外にも,私たちは日常いろいろな方法でコミュニケーションをとりあっています。

たとえば,指差しとか,ちょっとした視線でのやりとりとか,表情とかジェスチャーとかを使って…。

 

言葉によらないコミュニケーションは,言葉よりもさりげなかったり,理屈で説明するのが難しかったりして,自閉症スペクトラム特性をもつ人たちには言葉よりももっとわかりづらいものかもしれません。

 

3. 話し言葉以外の発信

  • 視線が合いにくい:「自閉症の人は視線が合わない」とよく言われますが,視線が絶対に合わないというわけではありません。ただ,一般的には今は視線を合わせるべきタイミングだろうというときに合わなかったり,合っても時間がとても短かったり。逆に「目と目を合わせないと失礼です」と教えられて,一生懸命視線を合わせ続けるといったこともあります。なかなか自然に視線を合わせたり外したりするのは難しいことだと思います。
  • 指差しを使う場面が適切でないことがある:たとえば,人を指差すのは失礼だということがわかりづらくて,人も物も同じように指差してしまうといったことがあったりします。
  • ジェスチャーが自然になりにくい:日本人の身振りは欧米人と比べると奥ゆかしいというか控えめというか,あまり派手ではありませんよね。その分,揃えた指先でそっと促したり,軽く顎で指したり,軽く会釈したりといった,とてもさりげないジェスチャーで案外たくさんの情報を伝え合っていたりします。そういうさりげない身振りを自分から発することが難しくて微動だにしない,ということもあれば,逆に欧米人のような熱のこもったジェスチャーを使ってまわりの人にちょっと驚かれてしまうこともあったりします。
  • 表情であまり豊かに感情表現しない:ちばんよくお聞きするのが,困ったときや怒られたときなどにちょっとニッコリした表情をしてしまう,ということ。ちょっとニッコリしているほうがまわりに受け入れてもらいやすいとわかってやっているのだろうと想像しますが,困っているときに笑顔でいたら相手には困っていることに気づいてもらえないし,怒られているときに笑ってしまうと反省していない・話を聞いていないと勘違いされて余計に怒られてしまうことにもなりかねません。その場面に応じた表情を作るのはちょっと難しいようです。

 

4. 話し言葉以外の受信

  • その場の状況で視線の意味を補うのが苦手:言葉には出せないけどこっそり相手に合図を送りたいとき(たとえば今ウワサしていた人がたまたまその場に現れたことに気づいたとき),視線でさりげなく伝えようとすることがありますよね。それが何故なのかわからなくて,せっかくの合図を読み取れないことがあったりします。
  • 指差しの意味の理解が困難なことも:たとえば「あれ取って」と言われたとき,その場の流れや相手の行動から何を指差しているのかを察することが難しかったり,「ねぇ,あれ見て!」と言われたときに相手と一緒に同じものに注目すること(共同注視といいます)が苦手だったりします。
  • 相手の微妙な表情変化を読み取るのが苦手:相手の表情が退屈そうだったり悲しそうだったりしても敏感にそれを読み取ることはあまり得意ではありません。逆に笑顔の相手から大声で話しかけられると,声の大きさに圧倒されて「怒鳴られた」と怖く感じてしまうということもあったりします。

 

話し言葉よりも曖昧に,微妙に交わされる視線やジェスチャーでのやりとりは,自閉症スペクトラム特性をもつ人には思い掛けないほど難しく感じられることがあります。

 

そのために誤解が生じたりうまく伝わらなかったりするのはお互いにとって残念だしつらいことですよね。

 

「ほら,あの青い飛行機,すごくかっこいいよ」とわかりやすく補足しながら指差したり,「さっきの合図,じつはこういう意味だったんだ」ってそっと説明してあげたりすることができたらいいですね。

 

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