2011年

1月

14日

ただひとつやっていたことは…

「何かやったってどうせ無駄だから,今のままでいい」

親御さんと一緒に診察室には来てくれはくれるけれど,どうなりたいのか,何を変えていきたいのかと何度お尋ねしてもずっとこんな感じでしか答えてくれない青年期の患者さんにお会いしたことがあります。

「何もしなければますます今のままだし,何か新しいことをやってみたら違ってくるかもしれないね。ここに通っているだけでは何も変わらないとは思うんけど,でもまずはここに通い始めてくれたことが大きな変化だよね」

こちらからはそんなふうに声を掛けるのが精いっぱいだったのですが。


その翌月頃に来てくれたとき,突然「やっぱり新しい高校に行ってみようと思います」と切り出してくれたのでした。

こちらは,不意打ちにただただ驚くばかり(笑)。


こどもたちと診察室で会わせてもらっていると,今の自分は何もお役に立てていないなぁ…と無力感を感じることがあります。

悲しい気持ちになるけれど,今回のようなことがあると「あぁ,何もしないで待つ時間も無駄じゃなかったな」と思ったりして。

本当にこの間,何も特別なことはできていないのですが,ただひとつだけやっていることがあるとすれば…,

「お子さんが本来もっている力を信じながら待っている」ということに尽きるかもしれません。


自分から進んでというわけではなくても,診察室には来てくれた…それはちょうど種が植えられたようなもの。

土の中の種は外から見えないし,種はちっとも変わっていないような気がする。

でも,少しずつ芽を出す準備をきっと始めているはず。何しろ土には植えられたんだから。

不安に駆られて掘り起こしたり濃い肥料を与えたりはしないで,適度に水を与えたり日に当てたりしながらじっくり見守ると,やがて自然に芽が出てくる…,

そんなイメージです。


積極的に介入できていない言い訳かもしれないけれど。

それでも,信じて待つことの力は侮れない!と私は思います。


芽が出てからも元気に茎を伸ばして葉を広げていくのを邪魔しないでほったらかさないで,楽しみながら見守りたいな,と思っているところです。

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