悲しい犯人捜し。

これは以前あった,ちょっと悲しいできごとなのですが…,

ADHDの診断でコンサータというお薬を飲んでもらっている中学生の男の子のお話です。

お友達との関係はわりとうまくいっていて,休憩時間には仲のいい男の子数人で鬼ごっこのようなことをして遊んでいたらしいのですが…,

先日いつものように遊んでいるとき,そのなかのひとりがちょっとした段差で足を捻って怪我してしまったのです。

それは,誰かとぶつかったとか誰かに押されたとかいうことではなくて,怪我をしたお子さんがたまたま走っていて段差につまずいたということだったよう。

診察室へ来てくれている男の子も含めて,一緒に遊んでいたこどもたちは怪我した彼を心配し,みんなで保健室へ連れて行きました。

怪我をした子もその親御さんも「遊んでいるときに偶然怪我をした」ということで,学校へも友達へも責任を追及するようなこともなく過ぎたのですが,

その晩,患者さんのおうちに担任の先生から電話が入ったのだそうです。

「ひょっとして,お子さんのADHDのお薬の量,少し減ったりしたんじゃないですか?」と。


「いいえ,これまでと同じ量ですよ」って答えたんですけどね…と私に話してくださったお母さん,本当に悲しそうで,そして悔しそうでした。

それを聞いて私も,悲しくて悔しい気持ちになりました。

もちろん実際に負傷した場面を見ていたわけではないけれど,今回の負傷の原因は患者さんの多動や衝動性にあるわけではなさそうです。

もちろんコンサータの効果不足で発生したわけでもないでしょう。

ADHDの診断がある,お薬を飲んでいる,というだけの理由で,こういう事故が起きたときにまるで犯人のように扱われる…そんなことがあるのだなぁ,とちょっとびっくりしてしまいました。

先生の電話を受けて,お母さんから怪我した男の子のお母さんへ電話して謝ってみたら「うちの子が勝手に転んだんだもん,全然気にしてないわよ」って明るく言ってもらえたとのことだったので,ホッとしましたが。

ADHDに限らず,発達障害や精神医学的な診断名がネガティブな目で見られるということは現実に起こりうるということを改めて認識したできごとでした。

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