1.5次予防っていいな。

今日はちょっと難しくて私の苦手な,公衆衛生っぽいお話から…。

「予防医学」という考えかたがあります。

おおまかにいうと,「病気になった → 治療しよう」というのが「治療医学」なのに対して,「予防医学」は「病気を未然に防ぐ」とか,もう少し広げて「病気の進行を遅らせる」「再発を防ぐ」といった意味で使われます。

この予防医学は3段階に分けられることが多くて,私のおおよその理解では

    * 1次予防:健康増進と疾病予防
    * 2次予防:早期発見・早期治療・合併症予防
    * 3次予防:リハビリテーション…社会復帰対策や再発防止対策

というイメージです(正確さに欠けるかもしれませんが,ご容赦くださいね)。

さて,ここまでですでに結構ややこしいのですが,最近医療の領域によっては「1.5次予防」なんてことばが登場するようになりました。

1.5次ということは1次と2次のあいだ。
発症はしていないけど健康とは言い切れない,つまりリスクの高い段階でのフォローということになります。

たとえば,人間ドックでコレステロールの値が高いことが見つかったとします。脳血管障害はまだ起きていないけど,脳血管障害になりやすいリスク因子は持っている,ということになりますね。
(高コレステロール血症という病名の立場からするとすでに2次予防になるのがちょっとややこしいところですが…。)

たとえば,肝炎ウイルス陽性だということがわかったとしたら,今の時点で症状がないとしても,肝がんや肝硬変のリスクが高いことが判明した,ということになります。

こうした時点で脳血管障害や肝がん・肝硬変を予防するために介入することが1.5次予防と呼ばれるわけです。

この1.5次予防は精神医学領域でも最近注目されています。

統合失調症などの精神疾患の発症したわけではないけれど,こころに軽い変調を来した状態を精神疾患発症リスクの高い状態として見つけ出して介入する,という動き。

ARMS (At Risk Mental State)とかUHR (Ultra High Risk)なんて呼ばれます。

まだ発症したとは言い切れない状態でも,日常生活に支障があれば「なんかおかしいな?」と受診してくれるお子さんやご家族はもちろんたくさんいらっしゃいます。

私たちとしても「まだ何か“病気”と呼べる状態に至ったわけではなさそうだけど,ストレスは結構掛かってるみたいだから,少しお薬の力を借りてみるのもいいし,今のような無理はちょっと控えて休養してもらったほうがいいかなと思いますよ」と介入できます。

結果的にお薬の量も少なく,飲んでいただく期間も短く済んだりして。場合によってはお薬を使わないケースだってあります。
もちろん受診回数が少なくて済むことが多いわけで…通院の負担が少ないのもいいですよね。

そう,私は診察室でこの「1.5次予防」に力を入れたいと思っているのです。

でも,診察室で患者さんやご家族をただお待ちしているだけでは,1.5次予防はできません。

普段からこどもたちのこころの健康状態に関心を持っていただいて,「ちょっと変だぞ」「無理がきてるかな」と思ったら早めに気軽に相談機関や医療機関を利用していただきたいと思っていることをこどもたちや親御さんに広くお伝えしたいのです。

それができるのは,たとえばこの「こころの小枝」であったり,地元での講演活動であったりするわけです。


そして,どうせなら1次予防にも関わることができたらいいな…という野望もあったりして…。

 

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