それぞれのアプローチで。

昨日の記事に予防医学のことを書いたのですが,今日もちょっと似たお話になりそうです。

医師の仕事の一般的なイメージを考えてみると,検査などを通して病気を診断して,お薬を出したり手術をしたり…といった感じですよね。

でも,この一般的な業務だけやっていたのでは,じつは1次予防にはほとんど携わることができないのです。

医療が「病気を診断」するところから始まるとしたら,「病気が発症する前」には介入することはできないですもんね。

だから「発症予防に取り組みたい」というのはちょっと本来のお仕事とはズレた目標なのかもしれません。

でも,診察室で「もうちょっと早く受診してくれていたらこのお子さんもご家族もこんなに苦しくならずに済んだだろうなぁ…」と思うことは結構あるのです。

こんなことを考えていて,ふと思い出したことがありました。


学生時代に細菌学の実習をしていたときのこと。

当時の私は細菌とかウイルスとか微生物に関することにあまり興味が持てなくて(今も全然詳しくならないままですが),それでも興味のあるなしに関係なく全員が講義や実習を受けて単位を取らないといけない科目なので,それなりな態度で実習にも出席していました。

そんな私を見透かされたのか,顕微鏡を覗いているときある先生が近くの席に来て,こんな話をし始めたのです。

「何で細菌のこととか勉強しなきゃいけないんだろ?って思ってる学生,多いんだろうなぁ…」

(どきっ。)

「俺のことも,『どうしてこの先生,細菌学とかやってるんだろ?』なんて思われてるのかな」

(…はい,ちょっと思ってました。)

「俺ね,最初は内科医になったんだよね。自分は手術とかには向いてないと思ったけど,病気の人を治してあげたい,って普通に思ってて。でも,細菌やらウイルスの感染でいろんな病気が発症するんだ,っていうのを考えれば考えるほど,細菌とかウイルスで病気が起こる前に食い止められたら患者さんは症状に苦しむ必要も大変な治療に耐える必要もないんじゃないか,って思えてきちゃって。それで内科医をしながら細菌学教室に研究をしに来たんだ。でも,結局そのままどっぷり(笑)」


そのときは「へー,そんな考え方をする人もいるんだ…」と思っただけで,この話もすぐに忘れてしまっていたのですが,最近私自身が予防について考えるようになって,久しぶりにこの先生のことを思い出したのでした。

いろんな考えかたの医師がいて,いろんなアプローチがあって。

でも,根っこの部分は一緒。

「病気で苦しむ人を減らしたい」

そしてもちろん,医師以外の職種の人たちも,それぞれの考えかたで,それぞれのアプローチで,こどもたちの健康を願ってる。

みんなの思いがうまく実を結ぶといいなぁ…と思います。

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