睡眠薬について

こころの不調によく使われるお薬について,総論的なことは以前記事にしましたので,各論的なことに触れてみたいと思います。

まず,いちばん一般的に使われているのは睡眠薬ではないかと思います。

文字どおり睡眠を助けるお薬です。睡眠薬にはとてもたくさんの種類があります。

眠れない状態(不眠)はおよそ次の4つのタイプに分類されるのですが,

入眠障害:寝付きが悪い
早朝覚醒:起きたい時間より早く目が覚める
中途覚醒:夜中に目が覚める
熟眠障害:睡眠時間は取れているがぐっすり眠れていない

それぞれのタイプに合った睡眠薬を使わないと,眠れないことのつらさは解消されません。
たとえば入眠障害がある場合はサッと効き目が現れてごく短い時間だけ作用するようなお薬を使いますし,早朝覚醒がある場合は朝まで長く効き続けるようなお薬を使います。

もしも入眠障害がある人に対して長く効くお薬を使ってしまうと,結局なかなか寝付けなかったり,朝起きづらくなる,起きてからもボーッとするといったよくない効果に苦しむことになってしまいますよね。

睡眠薬は効き目の時間の長さから,超短時間作用型・短時間作用型・中時間作用型・長時間作用型の4段階に分類されています。
作用時間が同じくらいでも眠気を催す効果の強いお薬と弱いお薬がありますし,効果の現れかたに個人差もあるので,ちょうどよさそうなものをまず使ってみて,睡眠の調子をみてから変更することもあります。


さて,精神科のお薬が「怖い」とか「飲んだらぼけてしまう」とかいったイメージになっていることの理由のひとつは,この睡眠薬に対するおそれなのではないかと思います。
たしかに,飲んでから眠りに就くまでの時間に健忘(やったことを忘れてしまう)の症状が出たり,強い眠気のためにふらふらしてしまったりするなど,薬を飲まない状態ではあまり起こらないような望まない作用=副作用が出ることがあります。
でも,それはお薬を飲んだそのときだけ記憶が飛んだりふらついたりするのであって,睡眠薬を使うことで記憶力自体が落ちたり筋力が衰えたりするわけではありません。

また,睡眠薬を飲んでいて日中に眠気を感じるという場合,睡眠薬の効果が翌朝まで持ち越しているためなのか,それとも睡眠薬の効き方が足りないために結局眠れていないためなのか,とても判断が難しかったりします。
自己判断で多めに飲んだり途中でやめたりするのではなく,飲んでみて感じることを主治医の先生に伝えて調節してもらうことがとても大切です。

睡眠薬は,身体にとってちょうどよい睡眠のリズムを習慣づける手助けをするという目的で使うお薬です。
なので,毎日決まった時間に飲んで決まったサイクルで眠れるように習慣づけて,お薬がなくてもそのサイクルが維持できるようにもっていくというのが理想的な使いかたと言えます。

お薬をできるだけ使うまいとして飲んだり飲まなかったりする,眠れなかったときだけ遅い時間に使う,といった使いかたをすると,適切な睡眠リズムが習慣づかなくてむしろ長期間飲まなくてはならなくなるかもしれません。

そしてもちろん,必要以上にまとめて睡眠薬を飲むと筋肉の力が緩みすぎて適切な呼吸ができにくくなったりして,思わぬ危険な状態を招くこともあります。

適切なお薬を選んで,使う量や飲むタイミングを主治医と相談して決めながら,必要な期間だけ上手に付き合っていただけたらいいなぁ,と思っています。

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