抗うつ薬について

お薬シリーズ,3つめは抗うつ薬のお話です。

抗うつ薬は,もちろんうつ症状に有効なお薬です。

でも,1.うつ症状があっても使われない こともあれば,2. うつではない症状に使われる こともあります。

1. うつ症状があっても使われない場合
たとえば,そのうつ症状が躁うつ病の症状である場合には,原則として抗うつ薬を使った治療は行いません。抗うつ薬を使うことで,副作用として躁症状を誘発してしまうおそれがあるからです。躁うつ病の治療に使うお薬についてはまた後日触れたいと思います。
そして,躁状態のないうつ病やうつ症状であっても,児童思春期のこどもさんにはあまり積極的に処方されないことが多いです。それは,抗うつ薬を飲むことでイライラや焦りが増して,自分を傷つけたり自分の身に危険が及ぶような行動を取ってしまうという報告がこれまでに出ているためです。それでも抗うつ薬を使うメリットが大きいと思われるお子さんには,とても慎重に処方することはあり得ます。

2. うつではない症状に使われる場合
うつ症状はなくても,たとえば手を何時間も洗うとか,他人の持ち物に触れることが極端に苦手とかいった,とてもこだわりが強くなっている状態(=強迫症状)のとき,一部の抗うつ薬が有効なことがあります。
また,抗うつ薬のなかで副作用として眠気が出るもののなかには,深い眠りを増す効果があるものがあるため,これらのお薬が睡眠を助けるために使われることがあったり,やはり副作用としておしっこが出にくくなる(尿閉)タイプのお薬が夜尿症の治療に使われたり,といったこともあります。


抗うつ薬をうつ症状の治療に使うとき,残念なことに即効性があまり期待できません。
多くの場合,飲み始めてから2週間くらいでようやく効き始めるので,それまでの期間は抗不安薬を併せて飲んでいただくこともあったりします。

飲み始めに効き目がないにもかかわらず副作用が出やすいので,初めのうちは少ない量から用心深くお出しすることが多いです。なので,治療の途中でお薬の量が増えたとしても,それはうつ状態が悪化したから増えたのではなくて,初めの量が控えめだっただけ…もちろんそのように主治医から説明があるのがいちばんですが,こういう事情のことが多いので安心していただけたらいいなと思います。

うつ症状をもつ患者さんはとても真面目な方が少なくありません。
抗うつ薬を飲んで元気を出しながらこれまでどおりがんばろうとする,なんて患者さんと出会うこともありますが,どうかそれはやめてください。抗うつ薬を飲みながら休養を取っていただくのが理想的な治療の流れです。お薬を飲むだけでうつがよくなるというわけではない,ということはぜひ覚えていていただきたいと思います。

お薬を使いながら十分休養を取って調子がよくなってきたら,少しずつリハビリ的に活動を増やしていくことになります。
わりと思ったとおりに動けるようになってきたとしても,その状態で安心してお薬をやめてしまうのはとても危険です。

うつ状態はとても再発しやすいので,もしもこのタイミングでお薬をやめてしまうと半分くらいの確率で再発するというデータもあります。最低でも半年,できれば1年くらいはお薬を使い続けながら,減らすとしても注意深く,主治医と相談しながら少しずつ量を調節していくようにしてください。

どのお薬でも,正しく使ってこそちゃんとした効き目が得られるもの。
副作用が心配なときも,量の調節をしたいときも,ぜひ主治医の先生に積極的に相談して,上手に飲んでいただけたら嬉しいです。

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