2011年

3月

18日

気分安定薬について

お薬シリーズも再開しますね。4回目は気分安定薬のお話です。

気分安定薬,あまり聞き慣れないお薬のタイプかもしれませんが,「気分を安定させる」作用のあるお薬のことを指します。

でも,いわゆる「安定剤」とはまた違うタイプなのです。

「気分を安定させる」とは,気分の波を安定させること,つまり,躁の気分とうつの気分の波の振幅を小さく抑えてくれる作用があります。

前回の抗うつ薬の記事で,躁うつ病(双極性障害)の治療では原則として抗うつ薬を使わない,と書きましたが,躁うつ病こそが気分安定薬の活躍のしどころです。


気分安定薬でファーストチョイスとして使われることの多いお薬は,炭酸リチウム(商品名:リーマス など)です。

ただし,このお薬はふたつの点でちょっと使いにくいのです。

ひとつは,血液中のお薬の濃度をコントロールするのがちょっと難しいこと(濃度が上がりすぎると中毒症状があらわれます)。

もうひとつは,甲状腺という喉のあたりにある器官から出るホルモンを減少させてしまうこと。じつは,甲状腺ホルモンが減ってしまうとうつ気分が出やすくなってしまうのです。

こういう理由で,炭酸リチウムを飲んでいる患者さんはしょっちゅう血液検査を受ける必要があって大変です。


もしも甲状腺ホルモンの数値が下がってしまったら,ホルモン剤を補いながら炭酸リチウムを使い続けることもありますが,炭酸リチウム以外の気分安定薬に切り替えることもよくあります。

炭酸リチウム以外によく使われる気分安定薬は,じつはてんかんの治療に使われるお薬だったりします。

てんかんは脳の一部(全体に広がることもありますが)の活動が一時的に極端に高くなることで意識を失ったり身体が勝手に動いたり痙攀したりしてしまう病気ですが,てんかんに使われるお薬が気分の波の安定にも役立つということは,やはり脳の過剰な活動を抑えるというはたらきが共通だからなのかもしれませんね。

てんかんの治療に使うお薬もまた,副作用が出ずに済むように,効果がちゃんと現れるように,と血液の中のお薬の濃さをきちんと管理する必要があるので,どうしても血液検査をしなくてはならない,というのは炭酸チリウムと共通なのが,ちょっと残念ですね。


気分安定薬を使っても,とても強い躁状態になってしまったときにはあまり効果が上がりません。

そのとき使うお薬については,また別の記事でご紹介しますね。

お薬の話