認知の歪みを直したい…?

いつだったか,ちょっと珍しい理由で診察室へ来てくれた高校生さんがいました。

話はこんな感じでした…,

「今困っていることと言えば高卒後の進路のことくらいで,家族関係も友達関係も別に悩みはないんですが,私に『認知の歪み』があるかどうか診断してほしくて来ました」

…え,認知の歪みを診断?

どうやら彼女,本か雑誌を見ていて認知行動療法というもののことを知ったみたいで,そこに挙げられていた「認知の歪み」の例が自分にピッタリ当てはまると感じて受診してみようと思い立ったようでした。

「きっと歪んでるんです。だったら,直したほうがいいかな…って」

自己関連づけ,全か無か,悪い予測のエスカレート…いくつか例を挙げて尋ねてみると,それぞれに「たとえばこういうときこんな風に考えてしまって…」とちゃんと例を挙げて答えてくれました。

結局その日は,今後「認知の歪み」についてここへ受診しながら振り返ってみるかどうか家に帰ってもう一度考えてみる,ということで診察が終わりました。


今,うつ病に対する認知行動療法の有効性が活発に言われるようになっています。

うつ病の人の「認知の歪み」を和らげたり柔軟にしたりする方法として普及しつつある認知行動療法。

(本当は,うつ病以外の人にも有効だったりするのですけど…。)

彼女は「認知の歪み」をもつことが異常で治療を受けるべき特別なことだと思って受診してくれていました。

でも本当は,「認知が歪んでいる人」と「歪んでいない人」がいるわけではなくて,誰しもちょっとずつ認知の歪みや偏りがあって,でもその現れかたは人それぞれで,歪みのパターン数や強さの程度によって自分を苦しくさせるかどうかということが重要なんですよね。

そして彼女みたいに,「自分にはこういう考えかたの癖がありそうだ」と気付いた時点で,うつ病とかこころの不調をきたす前に認知行動療法的な予防的支援が受けられるのが本当はいちばんいいのだろうなぁ…と感じたのでした。

学校の授業みたいな場で集団で学べるのもいいでしょうし,各家庭で親御さんからお子さんにあたりまえの「生きていくうえで得するスキル」として伝わるようなかたちでもいいかもしれません。

そんな世の中が実現したらいいなぁ…♪

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