児童精神科医になるには(3) 地元で経験を積む難しさ

「児童精神科医になるには」,シリーズ第3弾です。

自分の働きたい地域で児童精神科医療を行うための人脈を広げながら,一般精神科医としても働く…。

そんな毎日を過ごしながら感じる難しさもあります。


ひとつめは,こどもの心の診療をするための時間が確保しにくいこと(それでも私の今の職場環境はものすごーく恵まれていますが…)。

おもにおとなを対象とした一般精神科診療はひとりあたり長くて10分程度。

だいたいそのつもりで予約人数も1時間5-6人に設定してあるのですが,こどもの患者さんにはできることなら初診1時間,再診は30分くらい割きたいなぁ…なんて思ったら,途端におとなの患者さんの予約診療が回らなくなってしまいます。

こどもの患者さんを診るためにおとなをあまり診ないとなると,ほかの先生方の負担が増えて迷惑を掛けてしまうことになるし,こどもの患者さんのために長い時間を掛けたところで診療報酬は診察に掛かる時間に対して全然高くない(20歳未満加算は一応ついても診療時間に比例するような額ではありません…これもここ数年で少しずつ改善されてきてはいますが…)ので,病院の収益にもつながってこない。

そんな状況なので,一般精神科でこどもの診療を積極的に行うことを周囲から歓迎してもらえるなんて夢にも思えないわけで。

結局,「こどもの診療してます!」ってこともPRできず(だって患者さんが殺到したら周りのみんなはますます困ってしまいますから),肩身の狭い思いをしながら細々と診させていただくことになります。

…ただ,最近は受診する患者さん側のニーズが増えてきているので,病院へ来てくださったからには医師の側は診ないわけにはいかない…ということで,積極的に「こどもの患者さんが来られたらぜひ診させてください!」という姿勢の精神科医がいること自体は上司や同僚からそれなりに歓迎されるという面はあります(笑)。


ふたつめは,児童精神科医の先輩の先生方から系統的な指導が受けられないこと。

こまめにスーパーバイズを受けたり気軽に相談したりできず,基本的には自分の判断で診療を進めていくことになるわけですが,診療させていただくからには治療する医師には常に大きな責任がつきまといます。

だから,研修会・講演会や文献などから自分でどんどん知識を得ていくことも必要だし,他機関であっても「こんな患者さんを今診ていて困っています!」って気軽に相談できる先輩児童精神科医の存在も不可欠です。


こんなギリギリの状況でも,「こどもの心を診療する医師は必要だよね,この病院にだってニーズはあるし,診てくれたら実際助かるよ」なんて診ることをちょっぴり歓迎してくださる職場の上司・同僚たちや,「あの先生ならこどもも診てくれるから」とこんな私でもあてにして患者さんを紹介してくださる他科・他院の先生方や,バタバタした雰囲気のやや頼りない診療でも笑って大目に見てくださる患者さんやそのご家族に支えられ励まされながら,ゆっくりキャリアを積み重ねる日々です。


児童精神科医の先輩から手厚い指導を受けられない環境でも頑張ろう! という決心と,地域のみなさんに育てていただいているんだ!という感謝の思いでなんとかやっている,というのが本当のところ。

きっと誰かに必要としてもらっている…だからこそ自分が諦めることは許されない。

大胆に貪欲に,自分のやりたいことに向かって頑張ってみよう,と思う…そんな仲間が増えてくれたら本当に嬉しいです♪

 

児童精神科医になるには